今までの人生で、様々なモバイル機器を使い倒してきました。
その中で、最も使用頻度が高く長い期間愛用した製品は何か?
おそらく、それはこのNEC製の「モバイルギアII(MC/R330)」でしょう。
発売は1999年終わり頃。
パソコンは、Windows 98が爆発的な普及を見せていた時代です。
このモバイルギアに搭載されているOSは「Windows CE」という組み込み機器向けのWindowsです。
Windowsを名乗ってはいますが、この「Windows CE」上ではWindows 98のアプリケーションがそのまま動くわけではありませんでした。
パソコンが搭載しているIntel x86系統のCPUが搭載されているわけでもなく、モバイルギアには、MIPS系のCPUが搭載されているので、そもそもバイナリレベルで互換性はありません。
しかしながら、パソコンで専用のVisual C++やVisual Basicで作ったアプリケーションをモバイルギアIIに転送し、実行することは可能でした。
APIも本家Windowsのサブセットが実装されており、必要最低限のものは同じ使い勝手で使用できました。
この時代、この「Windows CE」を搭載した機器には2つの流れがありました。
いわゆる「PDA」と呼ばれる、今のスマートフォンのご先祖さまのような電子手帳。
そして「ハンドヘルドPC」と呼ばれる、ノートPCよりも更に小型のモバイル端末。
モバイルギアは、後者のカテゴリーに属します。
各社挙って「Windows CE」を搭載した「ハンドヘルドPC」を発売していたわけですが、とりわけNECのモバイルギアが優れていたのは、キーボードの質感の良さにあったと思います。
モバイル端末だからキーは小さいですが、さりとて実用に耐えられないほどは小さ過ぎず、メンブレンではなくパンタグラフ式を採用したことにより、適度なストロークの深さもあります。
何より、キーをストロークする度にパチパチと電子音が鳴るという小技付き。
これが小気味良く、使う者の心理に地味な高揚感を与えてくれます。
(音を鳴らすだけバッテリーの無駄じゃん!…と思って無音設定にすると、途端に得も言われぬ寂しさに襲われる。)
NECのモバイルギア・シリーズには多くの機種がラインナップされていました。
最初期には、そもそも「Windows CE」ではなく、MS-DOSのようなOSを搭載した機種。
フルカラーTFT液晶とバックライトを搭載した高級機種などなど…。
今回ご紹介する「モバイルギアII(MC/R330)」という機種は、その中でもエントリーモデルであり、モノクロ4階調STN液晶で単3乾電池で動作するモデルです。
このMC/R330こそ、エントリーモデルとはいえ、おそらく最も評価の高いモデルであったと思います。
その最たる要因は、電源が充電式の内蔵バッテリーではなく単3乾電池二本であり、それでいて25時間という連続駆動時間を実現していたことでしょう。
今の日本、単3乾電池は何処でも買えますよね。
また、充電式の内蔵バッテリーは部品点数が多くなり、バッテリーそのものを含めて経年劣化による不具合が発生しやすい部分ですが、乾電池駆動であれば電源回路がシンプルなので、こうして何年経とうが元気に動いてくれます。
組み込みOSである「Windows CE」の起動は1秒も掛かりません。
思い立ったら、蓋を開いてすぐに文書入力!
それに加え、キーボードの質の高さと、電源の取り回しの良さ、そしてハードウェアの屈強さから、特にライターさん、物書きの方に愛用者が非常に多く、私の他に今でも現役で使用している方も沢山いるほどです。
オークションサイトなどで、他の高級機種よりもエントリーモデルのはずのMC/R330に高値が付いているのは、このような理由からだと思います。
搭載されているアプリケーションは、当時のパソコン用のOfficeのサブセットや、NECオリジナルのエディッターなどの出来の良いソフトウェアがインストールされています。
LANは、有線/無線問わずインターフェースは内蔵していません。
その代わりモデムは内蔵していますので「Internet Explorer」といったブラウザや、メーラーは用意されています。
更に、今では全く見かけなくなったPCカードスロットを搭載していますので、イザとなれば有線LANカードや、WiFiカードを挿入して使用することができます。
(WiFiカードを使うと電池の消耗が激しいので、あまり使いません。)
さて、このモバイルギアII、近年では流石に出番は減っていました。
元々私の場合、プログラマーのクセに文書を書く時は紙と鉛筆派です。
プログラマーであるが故に、電子データの危うさを知っているからですかね?
なので、出先で報告書などの、どうせ後で電子文書にしなければならない要件を認(したた)める際には大いに活躍をしてくれましたが、それもいつしか報告書を書く立場から、それを承認する立場になってしまいました。
ところが、このブログを始めてからというもの、電子文章を書く機会が大幅に増えました。
そのために、数年ぶりにこの愛機の復活と相成りました。
この記事のテキストもモバイルギアIIで書いています。
とはいえ、かなりのロートル機。
そろそろ後継機が欲しいところですが、もはや新品で手に入るはずもなく…。
キングジムさんの「ポメラ DM250」なんて良さそうですね。
でもこれ、乾電池じゃないんだ…。
そこが重要なのに。
部品取り用にオークションサイトなどで何台か購入しておきましょうかね。
とにかく今ある一台を大切に使いたいと思います。
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