2024年1月2日火曜日

「pcDuino3」でYocto Project その6

前回からの続きです。

このテーマを最初からご覧になる場合はこちらからどうぞ。


「meta-sunxi」レイヤーの取得

さて、前回までに述べた通り「Yocto Project」で「pcDuino3」用のLinuxディストリビューションを作成するには「meta-sunxi」というレイヤーが必要であることが分かりました。

前々回「VMware Workstation Player」上にインストールした「Ubuntu」を立ち上げましょう。

ログイン後は、キーボードの「Ctrl」+「Alt」+「T」を同時に押すなどして、ターミナルを起動させます。

「Ubuntu」


次に、以下のコマンドをターミナルで入力してリターンキーを押すことにより「Yocto Project」の実体である「poky」ディレクトリに移動します。


$ cd poky/

ターミナル - 1


続いて「Yocto Project」の動作に必要な環境変数の設定を設定します。

これは「poky」ディレクトリ以下にある「oe-init-build-env」シェルスクリプトを「source」コマンドで実行することによって行います。

もし、前々回「「pcDuino3」でYocto Project その4」からブッ通しで作業してくれている方の場合、これを行う必要はありません。

しかしながら、一度でもターミナルを閉じてしまったり、ましてやLinuxを再起動してしまった場合などは、再びこの手順を行う必要があります。

なお、前々回にこのコマンドを実行した際は「poky」直下に「build」ディレクトリも作成されたはずですが、これは初回だけです。

すでに「build」ディレクトリが作成されている場合には、これを再生成することはなく、単純に環境変数の設定のみが行われます。


$ source oe-init-build-env

ターミナル - 2


上記のコマンドの実行の結果、強制的に「/home/poky」から、その直下の「/home/poky/build」に移動させられてしまっています。

これだと次の手順で都合が悪いので、一個上の「/home/poky」に戻りましょう。


$ cd ..

ターミナル - 3


続いて、件の「meta-sunxi」レイヤーを取得しましょう。

それが何処にあるかは、前回ご紹介した「OpenEmbedded Layer Index」の「meta-sunxi」レイヤーのページに記述があります。

これによると、リポジトリのURLは「https://github.com/linux-sunxi/meta-sunxi.git」ですね。


https://layers.openembedded.org/layerindex/branch/master/layer/meta-sunxi/

「OpenEmbedded Layer Index」 - 1


これに従い、以下のコマンドを入力します。


$ git clone https://github.com/linux-sunxi/meta-sunxi.git

ターミナル - 4

上記のコマンドの実行の結果「/home/poky」ディレクトリ以下に「meta-sunxi」が生成されたはずです。

ファイル・ブラウザで確認しておきましょう。

ファイル・ブラウザ - 2


お次は、この「meta-sunxi」のリモートブランチ「origin/mickledore」をローカルブラン「pcduino3」としてチェックアウトします。

…って、長嶋茂雄さんの会話みたいになってしまいましたね…。

この意味は、前々回「「pcDuino3」でYocto Project その4」を参照してください。

要するに「meta-sunxi」のバージョンを今回使用する「Yocto Project」の少しだけ古いバージョンである「mickledore」の時期のものへ先祖返りさせますよ、ってことで。

これを行うためには、生成されたばかりの「meta-sunxi」ディレクトリの中へ移動する必要があります。

以下のコマンドを入力です。


$ cd meta-sunxi/

ターミナル - 5

そして、以下のコマンドでチェックアウトです。


$ git checkout -t origin/mickledore -b pcduino3

ターミナル - 6

チェックアウトが終わったら、一個上の「/home/poky」に戻りましょう。


$ cd ..

ターミナル - 7


さて、前回も説明しましたとおり、レイヤーはディレクトリの配置だけではダメで、そのディレクトリのパスを「/home/yocto/poky/build/conf/bblayers.conf」ファイルに記述する必要があります。

今回の場合、以下の部分に「meta-sunxi」のパスを記述すれば良さそうなのですが…

「/home/yocto/poky/build/conf/bblayers.conf」ファイル


…これは、非常にお行儀の悪いやり方だそうです。

では、お上品なやり方とは?

それは、レイヤーを操作するための「bitbake-layers」コマンドを使うことです。

それでは、以下のように「bitbake-layers」コマンドを使用して、レイヤーを追加してみましょう。

「bitbake-layers」コマンドに、レイヤーの追加を指示する「add-layer」オプションを加え、そのパスを指定します。

ですが…


$ bitbake-layers add-layer ../poky/meta-sunxi/

ターミナル - 8


エラーメッセージが出て失敗しましたね…。

内容は…

「sunxi」レイヤーは「meta-python」レイヤーに依存するが、このレイヤーはアンタの設定では有効ではない!

…とか何とか。

うむ、どうやら依存関係の問題で「meta-sunxi」の前に他のレイヤーを追加しておく必要があるみたいですね。

これは「bitbake-layers」コマンドがレイヤーの依存関係を検証した結果、出力されたエラーメッセージです。

もし、レイヤーを追加するために直接「/home/yocto/poky/build/conf/bblayers.conf」ファイルを書き換えていたら、このエラーには気が付かずに、後々ドツボにハマっていたかもしれませんね。

そういう意味で、ちゃんと「bitbake-layers」コマンドを使用して、レイヤーを追加するのが正しい…というか、間違いのない作法ということなのでしょう。

では「meta-sunxi」が依存するレイヤーとは?

答えは、先程も開いた「OpenEmbedded Layer Index」の「meta-sunxi」レイヤーのページにあります。

右側の「Dependencies」という欄に注目。

これによると「meta-sunxi」レイヤーは、以下の4つの別のレイヤーに依存しているとのことです。


●openembedded-core

●meta-oe

●meta-python

●meta-arm

「OpenEmbedded Layer Index」 - 2


というわけで、これらのレイヤーから先に導入しましょう。


依存レイヤーの導入

上記に挙げた「meta-sunxi」が依存するレイヤーを順番に導入していきましょう。

まずは「openembedded-core」レイヤーです。

このレイヤーの導入については、特にやることはありません。

何故ならば「Yocto Project」、すなわち「poky」ディレクトリを生成した時点で既に導入されているからです。

その場所は「/home/poky/meta」ディレクトリです。

ファイル・ブラウザ - 3


「OpenEmbedded」は「Yocto Project」の基となったフレームワークであることは前述のとおりです。

つまりopenembedded-core」レイヤーとは、その上に被せる全てのレイヤーの基底となるレイヤーであると考えてください。

したがって、最初から導入されているんですね。


次に「meta-oeレイヤーです。

このレイヤーの「OpenEmbedded Layer Index」のページを見てみましょう。

「meta-sunxi」レイヤーのページの右側の依存レイヤーのリストからから「meta-oe」をクリックします。

「OpenEmbedded Layer Index」 - 3


開かれた「meta-oe」レイヤーのページで、レポジトリのURLがわかります。

git://git.openembedded.org/meta-openembedded」ですね。

「OpenEmbedded Layer Index」 - 4


これに従い、ターミナルで以下のコマンドを実行することでダウンロードを行います。


$ git clone https://github.com/linux-sunxi/meta-sunxi.git

ターミナル - 9


ファイル・ブラウザで「meta-openembedded」が生成されているのを確認しましょう。

「meta-oe」っていう名前じゃない理由は、後で述べます。

ファイル・ブラウザ - 4


「meta-sunxi」の時と同様「meta-openembedded」のリモートブランチ「origin/mickledore」をローカルブラン「pcduino3」としてチェックアウトします。

以下のコマンドで、生成されたばかりの「meta-openembedded」ディレクトリの中へ移動します。


$ cd meta-openembedded/

ターミナル - 10


以下のコマンドでチェックアウトです。


$ git checkout -t origin/mickledore -b pcduino3

ターミナル - 11


チェックアウトが終わったら、一個上の「/home/poky」に戻りましょう。


$ cd ..

ターミナル - 12


次に「meta-pythonレイヤーです。

このレイヤーの「OpenEmbedded Layer Index」のページを見てみましょう。

「meta-sunxi」レイヤーのページの右側の依存レイヤーのリストからから「meta-python」をクリックします。

「OpenEmbedded Layer Index」 - 5


開かれた「meta-python」レイヤーのページで、レポジトリのURLがわかります。

git://git.openembedded.org/meta-openembedded」ですね…って、コレさっきの「meta-oe」の時と一緒じゃん!?

「OpenEmbedded Layer Index」 - 6


これはどういうことか?

種明かしのために「/home/poky/meta-openembedded」ディレクトリをファイル・ブラウザで開いてみてください。

すると、その中に「meta-oeディレクトリと「meta-python」ディレクトリが配置されていることが分かります。

ファイル・ブラウザ - 5


これはつまり「meta-openembedded」という、いかにもレイヤーっぽい名前のディレクトリの直下にmeta-oe」、meta-python」とその他複数のレイヤーが格納されているという状態です。

したがって「meta-python」は既に取得済みであることが分かります。

このような一つのレポジトリに複数のレイヤーが含まれる例は、大規模なカテゴリの場合に、ママ目にすることがありますので、ご用心を。


それでは、ここいらで「meta-oe」と「meta-python」の両レイヤーを「/home/yocto/poky/build/conf/bblayers.conf」ファイルに追加してしまいましょう。

お作法として「bitbake-layers」コマンドに、レイヤーの追加を指示する「add-layer」オプションを加え、そのパスを入力することによって行うのでしたね?

まずは「meta-oe」レイヤーから。


$ bitbake-layers add-layer ../poky/meta-openembedded/meta-oe/

ターミナル - 13


続いて「meta-python」レイヤー。


$ bitbake-layers add-layer ../poky/meta-openembedded/meta-python/

ターミナル - 14


さて、次はmeta-armレイヤーです。

このレイヤーの「OpenEmbedded Layer Index」のページを見てみましょう。

「meta-sunxi」レイヤーのページの右側の依存レイヤーのリストからから「meta-arm」をクリックします。

「OpenEmbedded Layer Index」 - 7


開かれた「meta-arm」レイヤーのページで、レポジトリのURLがわかります。

git://git.yoctoproject.org/meta-arm」ですね。

「OpenEmbedded Layer Index」 - 8


これに従い、ターミナルで以下のコマンドを実行することでダウンロードを行います。


$ git clone git://git.yoctoproject.org/meta-arm

ターミナル - 15

ファイル・ブラウザで「meta-arm」が生成されているのを確認しましょう。

ファイル・ブラウザ - 6


続いて「meta-arm」のリモートブランチ「origin/mickledore」をローカルブラン「pcduino3」としてチェックアウトします。

以下のコマンドで、生成されたばかりの「meta-arm」ディレクトリの中へ移動します。


$ cd meta-arm/

ターミナル - 16


以下のコマンドでチェックアウトです。


$ git checkout -t origin/mickledore -b pcduino3

ターミナル - 17


チェックアウトが終わったら、一個上の「/home/poky」に戻りましょう。


$ cd ..

ターミナル - 18

次は「meta-armレイヤーを「bitbake-layers」コマンドを使って「/home/yocto/poky/build/conf/bblayers.conf」ファイルに追加しましょう。

ここで、一つご注意を。

「OpenEmbedded Layer Index」の「meta-arm」のページを今一度御覧ください。

右側の「Dependencies」という欄によると「meta-arm」レイヤーは、以下の3つの別のレイヤーに依存しているとのことです。


●openembedded-core

●meta-python

●meta-arm-toolchain


このうち「openembedded-core」と「meta-python」に関しては、既に導入済みです。

問題は「meta-arm-toolchain」というレイヤーです。

これをどうやって入手するか?

meta-arm-toolchain」の表示をクリックしてください。

「OpenEmbedded Layer Index」 - 9


移動した「meta-arm-toolchain」のページでは、レポジトリのURLが「git://git.yoctoproject.org/meta-arm」となっています。

これは、先程「git clone」とチェックアウトを行った「meta-arm」レイヤーと同一です。

「OpenEmbedded Layer Index」 - 10


つまりこれは「meta-openembedded」の時と同じような、一つのレポジトリに複数のレイヤーが格納されているタイプなのではないだろうか?…と推測できます。

確認のために「/home/poky/meta-arm」ディレクトリをファイル・ブラウザで開いてみてください。

すると、案の定その中に「meta-armディレクトリと「meta-arm-toolchain」ディレクトリが配置されていることが分かります。

すなわち「meta-arm-toolchain」レイヤーは既に取得済みということが分かります。

ファイル・ブラウザ - 7


では「/home/yocto/poky/build/conf/bblayers.conf」ファイルに「bitbake-layers」コマンドを使って、これらのレイヤーを追加しましょう。

まずは「meta-arm-toolchain」からです。

「meta-arm」が「meta-arm-toolchain」に依存しているので「meta-arm-toolchain」の方が先です。


$ bitbake-layers add-layer ../poky/meta-arm/meta-arm-toolchain/

ターミナル - 19

次に「meta-arm」です。


$ bitbake-layers add-layer ../poky/meta-arm/meta-arm/

ターミナル - 20


これで「meta-sunxi」が依存するすべてのレイヤーの導入が完了したはずですね。


「meta-sunxi」レイヤーの導入

紆余曲折ありましたが、いよいよ当初の目的である「mets-sunxi」レイヤーを導入します。

ディレクトリは既に取得済みで、チェックアウトも終えています。

満を持して「/home/yocto/poky/build/conf/bblayers.conf」ファイルに「bitbake-layers」コマンドを使って「meta-sunxi」レイヤーを追加しましょう。

以下のコマンドを実行します。


$ bitbake-layers add-layer ../poky/meta-sunxi/

ターミナル - 21

ヨシっ!

今度はエラーが出力されることなく導入に成功したみたいですね。

それでは最終確認。

今まで散々「bitbake-layers」コマンドで「/home/yocto/poky/build/conf/bblayers.conf」ファイルにレイヤーを追加してきましたが、正しく出来ているでしょうか?

「/home/yocto/poky/build/conf/bblayers.conf」ファイルを開いて確認してみましょう。

以下のように今までの作業が反映されているでしょうか?

「/home/yocto/poky/build/conf/bblayers.conf」ファイル - 2


これで「BBLAYERS」という変数に必要なレイヤーのパスが代入されるようになりました。

いよいよ「pcDuino3」用のLinuxディストリビューションをビルドしましょう…と思いますが、まだまだ若干の作業が必要です。


さて、長くなってしまうので、一度区切りましょう。

遅ればせながら…

皆様、明けましておめでとうございます。

本年が皆様によって素晴らしい年になりますように。


<続く>

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