2024年1月20日土曜日

TOPPERS/ASP - Arduino UNO R4版 その5

前回からの続きです。

このテーマを最初からご覧になる場合はこちらからどうぞ。


デバッガ⇔ターゲット・ケーブルの作成

今回は、デバッガとしてRenesas純正の「E2 emulator Lite」を使用しますが、これを「Arduino UNO R4」に接続するためのケーブルが必要になります。

「E2 emulator Lite」と「Arduino UNO R4」を接続した例は、以下のようになります。

「E2 emulator Lite」と「Arduino UNO R4」の接続例


「E2 emulator Lite」を購入するとフラットケーブルが同梱されています。

しかし、これは2.54mピッチの20ピン用で、1.27mmピッチの10ピンヘッダの「Arduino UNO R4」のデバッグ端子には、どう頑張っても接続できません。

ですので、面倒でもケーブルの作成が必要です。

早速、部材集めです!

電子部品の購入は、やっぱりボクらの強い見方、秋月電子通商さんをオススメします!

お持ちでない方は、デバッガの「E2 emulator Lite」も一緒に導入できちゃうので、大変便利です。

さて、ケーブルに必要な部品は以下の通りです。


2×10(20P)両端コネクタ付IDCリボンケーブル × 1本

2×5(10P)両端コネクタ付IDCリボンケーブル × 1本

ピッチ変換基板 2×5⇔1×10 × 2枚

ピンヘッダ 1.27mm 2×5(10P) × 2個

ブレッドボード・ジャンパーワイヤ(オス-オス) × 1セット


この他、ワイヤーが必要ですが、適当に余っている物をご使用ください。

余りがない場合は、こちらのような「AWG24」くらいの太さの頑丈なものを推奨します。

これらの部品を使用した完成イメージは、以下の通り。

ケーブル完成イメージ


さて、これから配線をしていくのですが、各信号線の詳細を確認しておきましょう。

今回「E2 emulator Lite」と「Arduino UNO R4」を接続するのは、SWD(Serial Wire Debug)という方式です。

ARM系のマイコンと、それに対応するデバッガであれば、各社ほぼ共通の接続方式であり、信号線が少ないのが特徴です。

殆どの場合、以下の信号線をマイコンとデバッガのそれぞれに接続するだけで動作します。

信号名 詳細
VCC 電源
SWDIO SWD通信用データ
GND グランド
SWCLK SWD通信用クロック
RESET リセット


本当にこれらの信号線のピンが存在するのか?一応コネクタのピン配置を確認しておきましょう。

まずは「E2 emulator Lite」から。

以下の図の(b)のコネクタを使用します。

「E2 emulator Lite」側のコネクタ


そして「E2 emulator Lite」のマニュアルによると、このコネクタのピン配置は以下の通りとなります。

上記の各種信号線が、ちゃんと存在していることが確認できます。

「E2 emulator Lite」側のコネクタのピン配置 - 1


上記の内「RES」は「RESET」と同義です。

また、上記の内「UCON」という信号は、ターゲット側(つまり「Arduino UNO R4」)でGNDにおちているか否かで、接続の有無を検出する信号であるため、配線が必要です。


次に「Arduino UNO R4」です。

「Arduino UNO R4」の回路図の「SWD CONNECTOR」において、こちらにも各種信号線が存在していますね。

「Arduino UNO R4」の回路図 - 1


基本的には、同じ名前の信号がそれぞれ接触するようなケーブルの配線をすれば良いのですが、今回はひと工夫加えました。

「Arduino UNO R4」の回路図をもう一度ご覧ください。

P502_SCI1_RXD」と「P501_SCI1_TXD」という信号も「SWD CONNECTOR」に配線されていますね?

「Arduino UNO R4」の回路図 - 2


これらの信号はシリアル通信の信号です。

TOPPERS/ASPを動作させる際に、デバッグのためにシリアル通信を使用しますが、そのための信号をここから取れそうです。

それを踏まえた上で、作成するケーブルの具体的な配線は以下の通りとしました。

ケーブル配線図


シリアル通信の信号線「RXD」、「TXD」、「GND」の引き出し線は「ブレッドボード・ジャンパーワイヤ(オス-オス)」の片方のハウジング部分を切って使用しています。

ちょっと勿体ないけど…。

作成したケーブル(表)


裏から見ると、こんな感じ。

作成したケーブル(裏)


注意しなければいけないのは「E2 emulator Lite」側のピッチ変換基板において、ピンヘッダ10ピンなのに対して、これに刺すリボンケーブル20ピンであることです。

再度「E2 emulator Lite」のマニュアルのピン配置の表をご覧ください。

これによると、11ピン以降は何も信号線が配線されていないことが分かります。

つまり、後半の10ピンは未使用です。

「E2 emulator Lite」側のコネクタのピン配置 - 2


ですので「E2 emulator Lite」側のピッチ変換基板の10ピンのピンヘッダに、20ピンのリボンケーブルを刺す場合、以下のように1から10ピンまでを通電させるようにします。

10ピンのピンヘッダに20ピンのリボンケーブルを刺す様子


この作業は慎重に行ってください。

もしズレて刺したまま通電してしまうと、最悪の場合は「E2 emulator Lite」が壊れてしまうことがあります。

ですので、この部分はテスターなどを使用して配線を確認後、正しかったらグルーガンなどで固定してしまうと良いかもしれませんね。

鋭い方はお気付きかもしれませんが、単純にデバッガとターゲットを接続するだけなら、2×10(20P)両端コネクタ付IDCリボンケーブルが一本あれば、電気的には事足りるんです。

しかし、その場合は「Arduino UNO R4」のJDIGITALピンヘッダと幅が広い20ピンのリボンケーブルのピンソケットが干渉し、ピンソケットを物理的に削ったりしない限り刺さりません。

また、せっかくSWDピンヘッダに配線されているシリアル通信の信号線を無駄にしたくなかったため、それらを引き出すためにも、あえて今回のケーブル作成という手間をかけました。

引き出したシリアル通信ポートはデバッグ用途専用に使用することにして、正規のArduinoインターフェースの方に配線されているシリアル通信ポートはアプリケーション目的に使用しましょう。


さて、苦手な半田付けも無事終了。

組み込みエンジニアは、ハードウェアに触れる機会も多いため半田付けが得意な人もいるかもしれませんが、そういう人を本当に尊敬します。

私は、いくら努力してもダメ…。

(写真でバレる。キタナイでしょ?)

次回は、作成したケーブルでデバッガとターゲットを接続し、実際にTOPPERS/ASPを動かしていきましょう!

…と、その前に「e2 studio」でTOPPERS/ASP用のプロジェクトを作らなきゃだわ。


<続く>

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